神武直彦教授(大学院システムデザイン・マネジメント研究科/殿町先端研究教育連携スクエア・兼担教員)、西野瑛彦特任講師(大学院システムデザイン・マネジメント研究科)が、令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(理解増進部門)を受賞しました。(2025年4月15日)
文部科学省では、毎年、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者を、「科学技術分野の文部科学大臣表彰」として顕彰しています。
今回、神武教授らが受賞した「科学技術賞(理解増進部門)」は、青少年をはじめ広く国民の科学技術に関する関心及び理解の増進等に寄与し、又は地域において科学技術に関する知識の普及啓発等に寄与する活動を行った者が対象となる賞です。
神武教授らは「小中学生の科学技術を活用した社会課題解決に対する理解増進」においてその業績を評価され受賞に至りました。将来の科学技術イノベーションを牽引する傑出した人材の育成に向けて、高い意欲や突出した才能を持つ小中学生を発掘し、理数・情報分野などの学習を通じてその能力を伸長させる体系的な取組として、「ジュニアドクター育成塾KEIO WIZARD (2018~2022年度)」、「次世代科学技術チャレンジプログラム KEIO WIZARD "GLOCAL"(2023年度~)」 を独立行政法人科学技術振興機構(JST)次世代人材育成事業の支援を受け実施しています。
本活動は、宇宙、防災、医療、ヘルスケア、環境などに関心があり、実現したい未来に向けて身近な課題と世界の課題のつながりを理解し、我が事として捉え、多様な仲間と共に研究活動を通して課題の解決に向けた行動を起こしたいという意欲を持つ、全国の小学校5年生から中学3年生までの児童・生徒を対象に、講義やグループ対話に基づくワークショップを通じて社会課題の分析から解決策の創出までのプロセスを体験する「ベーシックコース」と、研究テーマの設定から成果発表までのプロセスを実践する「アドバンスドコース」により設計されています。身近な興味関心から課題を見つけ、知り、考え、対話し、伝え、それらの繋がりや関係性を俯瞰的に捉える「システムズアプローチ」、異なる興味関心を持つ小中学生が、豊富な専門・経験を有するメンター・講師・協力者らと世代や分野を超えて互いに学び合う「ラーニング・バイ・コーチング」により、実現したい未来に至るための解決法を研究し実践できる人材を養います。大学の教育基盤を軸に、産学官の様々な機関による支援のもと、仲間になった参加者同士が本活動で得た学びを世代や分野を超えて他者と共有し、世代や分野を超えた人材の交流の場を提供しています。
本活動により、2024年までの7年間を通じて両コースで400名程のジュニアドクターを輩出しました。受講生は様々なコンクールや学会などで発表・受賞するなど高い評価を頂いています。そして修了後も自主的に集い同窓会活動を行ったり、学生メンターとして再び本活動に関わるなど、学校や学年を超えた人材の交流が進んでいます。
KEIO WIZARD"GLOCAL"
https://www.tonomachi-wb.jp/juniordoctor/
(2025年6月より2025年度ベーシックコース受講生を募集予定です。)
神武直彦教授コメント
この度は、栄えある科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞を賜り、大変光栄に存じます。殿町先端研究教育連携スクエアおよびシステムデザイン・マネジメント研究科の皆様、400名程度の小中学生の学びと成長のための取り組みにご一緒頂いた様々な領域を専門とする多くのメンターの皆様、そして、ご支援を頂いている科学技術振興機構や企業の皆様、慶應義塾執行部の皆様、審査委員の皆様、そして、私たちの取り組みにご一緒頂いた小中学生の皆様に厚く御礼申し上げます。
今回の受賞対象となりました取り組みは、小中学生の好奇心を起点に物事を自ら理解し、考え、様々な人と対話をし、自ら行動し、人に伝えるといった「思っていることを具体的な形にしていくための考え方」を「システム思考」と「デザイン思考」という考え方に基づいて学び、体得するプログラムです。ありがたいことに、このプログラムの修了生が、私たちが想像していた以上のことに取り組まれ、いきいきと過ごされていることを見聞きすることが多く、その方々がメンターとしてプログラムに戻ってきて下さることも増えてきました。
慶應義塾大学初代総合政策学部長 加藤寛教授は、その総合政策学部第1期卒業生に以下の言葉を贈られました。「1年の計(はかりごと)を立てるならば種を蒔けば良い。10年の計を立てるならば、木を植えれば良い。しかし、百年の計をするならば、人を育てるしかない。」中国の古典「管子」の教えに基づく言葉です。慶應義塾は初等教育から高等教育までを一貫して行うことをひとつの特徴としています。慶應義塾が教育研究において先導者の一翼を担えるよう、今後も研鑽を積んでまいります。
<神武直彦 教授プロフィール>
慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、宇宙開発事業団入社。H-IIAロケットの研究開発と打上げに従事。欧州宇宙機関(ESA)研究員を経て、宇宙航空研究開発機構主任開発員。国際宇宙ステーションや人工衛星に搭載するソフトウェアの独立検証・有効性確認の統括および宇宙機搭載ソフトウェアに関するアメリカ航空宇宙局(NASA)、ESAとの国際連携に従事。2009年より慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科へ。日本スポーツ振興センターアドバイザーや慶應義塾横浜初等部長(校長)などを歴任。体育会水上スキー部長、野球部および蹴球部のアドバイザー。慶應キッズパフォーマンスアカデミーディレクター。国立研究開発法人審議会や宇宙政策および宇宙開発に関する各種政府委員。宇宙戦略基金統括プロジェクトオフィサー。大学発宇宙ベンチャーなどの13社で構成する宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合代表理事。名古屋大学客員教授。博士(政策・メディア)。
<西野瑛彦 特任講師プロフィール>
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科後期博士課程修了。博士(システムエンジニアリング学)。2023年に立命館大学授業担当講師、2024年より宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合上席研究員を兼任。専門は衛星技術や地理空間情報に基づく災害対応・気候変動リスク分析。アジア・オセアニア地域における準天頂衛星を活用した早期警報システムの設計と実証に従事。小中高生や大学・企業・自治体関係者を対象としたシステム思考・デザイン思考のワークショップを国内外で多数実施。地域安全学会2024年論文奨励賞受賞。